夢想・連想・妄想
本をあまり読まない私が
これまでに三人の全集を買った
二つは古本で一つは新刊
河原町の古本屋で手に入れたのは
広津和郎の全集
高校生の頃に松川事件に興味を持った
被告支援運動の中心に広津和郎がいた
講演を聞きに行ったが
淡々とした話は
私には眠いばかりだった

二・二六事件後
広津和郎は散文精神を唱えた
「どんな事があってもめげずに、忍耐強く、執念深く、
みだりに悲観もせず、楽観もせず、生き通して行く精神」
戦後もその散文精神で松川事件の裁判を勝利に導いた
広津和郎から学びたいと思った
自分の生き方の指針にしたいと思った
古本の彼の全集を手に入れたのは三十代の頃
もう三十年も前のことになる
しかし今手元にあるのはもうひとつの古本の全集だけ
広津和郎の全集と新刊で手に入れた宮本百合子の全集は
事情があって古本屋に引き取ってもらった
手元に残したのはハーバート・ノーマン全集
安藤昌益を知る手掛かりにと求めた
全集は恥ずかしいかな私には無用の長物だった

「青麦」という小説を広津和郎の全集で読んだ
読書ノートを見ると「真蔵」という名と感想を少し残しているが
どんな話だったかもう何も思い出せない
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