【短】半透明な愛を捧ぐ
『…初めまして、』
『女みてえになよなよした奴だな、お前』
りつさんは、誰にも気づかれない様な微妙な変化を見せた。
つまり、動揺しているんだ。
『すいません』
『男がすぐ謝るんじゃねよ』
梨吉さんは苛々したように、りつさんにきつく当たった。
けれどりつさんは決して目を逸らそうとはしなかった。
『……へえ、芯強そうじゃん。りつ?だっけか?よろしくな』
『よろしくお願いします、梨吉さん』
緊張が溶けて、安心したように小さく微笑んだ。
その顔は女の人の顔だった。
『っ!…笑えるじゃねえか』
一瞬、驚いたように動きを止めた後、余裕そうな口調で話した。
瞬きをすると、いつのまにかあたし桜の木の前にいた。
そこには顔は見えずとも梨吉さんだとすぐに分かった。
…あれ、りつさんは?
『りつ…なんで、今なんだ…』
『お前が女だって知ってたら俺は…っ!』
え、なに?どうゆうこと?
梨吉さんに近付きたくても、近付けない。