【短】半透明な愛を捧ぐ
『…この花が枯れても忘れないで下さいますか。って、忘れるわけないだろう』
その言葉を聞いた時、とても懐かしい感覚に襲われた。
なんだっけ?…あたしは、誰かと約束した気がする。
あともう少しで思い出せそうな所で、目の前が真っ暗になった。
「──ん…」
「里依南!ああ、良かった。もう平気?」
目を開けると、母が眉を下げて心配そうにあたしを見つめていた。
「……うん、」
「里依南ちゃん…、明日やっぱりあたしが前半やる」
「…でも、分からないんじゃあ…」
「実は、分かるんだけど不安だったの。ごめんなさい」
どうやらあたしは、無理をして倒れたみたいになっているみたいだ。
…ゼリー食べ過ぎなだけだと思うし。
「じゃあ、お願い、します」
「うん!頑張るっ」
そう言って母も混じって3人で笑った。
「里依南は起きたか?」
と、しばらくして父が入ってきた。
あまり感情が出ない父も、こればかりは心配そうな顔をしていた。
「ええ、今さっき…」
「あ、ああ、良かった」
今一瞬だけど、父の顔から安心よりも先に焦りがでたのを感じた。