【短】半透明な愛を捧ぐ
時は、遡ること、1700年。
茶色シミを作った手紙は、りつが墨で消した文字。
《最後にあなたにあいたい》
「…こんなの、私が書いて言いようなものじゃない」
だけど書き直すのはもう、私には時間がない。
急いで墨を裏と表に紙が破れない程度に塗った。
「──う、ごほっ!ごほっ」
咳を覆った右手に、若干血がついていた。
この病気は薬さえあれば治るのだが、その薬があまりにも高い。
「………っ、」
気を抜いたら、自然と涙が床に落ちているのに気がついた。
「……っく、」
貴方に会いにいかない代わりに、どうか、今だけは許してください。
…あなたを、想って泣くことを。
「う、わああああ…!」
嗚呼、貴方に会いたい。
私の涙は風と一緒に散っていった。
(出来れば来世でもう一度、あいたい)