【短】半透明な愛を捧ぐ

「…うわ、お婆ちゃん意外と字上手いんだなあ」


老人にしては達筆でブレのない字だった。

1ページ目を開くと、そこには書き始めた日付が書いてあった。

始めてたのは、1年前みたいだ。


《4月11日
天候は雨のち曇り、日記なんていつぶりだろう。学生ぐらいまでだったかな
今日はひ孫のりいが来た。もう高校2年らしい。時間は早いね、本当に》

それで、その日は終わっていた。


ぺらぺらめくっていると、ふと、そこだけ違っていた。

日記の紙の上にかなり古い紙をセロハンテープで貼っていた。


──なに、これ?

その紙は紙質も悪く、黄ばんでいて何が書いてあるか分からない状態だった。

なんかお婆ちゃんにとって大事な物なのかな。

そのページの下の方に、殴り書きでこう書いてあった。


“これが唯一の手紙”


…つまり、誰かに貰った手紙なのかな?

あまり気にせずに進めていくと、気になる単語が2つあった。

───なんで、お婆ちゃんがこれを?


“りつさん”

“りきちさん”


“どうか2人に幸あれ”

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