【短】半透明な愛を捧ぐ
しばらくして目を開けると、もう気持ち悪さはなくて、ただそこはまるでドラマみたいなセットでよく見る江戸の町みたいだった。
…なに?ここ。
ふっと、目線を前に移すと、男でも女でもどちらでも納得のいきそうな髪の短い人がいた。
けど、服装を見るとどうやら男の人みたいだ。
『すいません。あの、りつと申すものですが、』
何故かあたしはこの人と一緒に店に入っていた。
え…!この人がりつ!?
男の人?女の人?あー!訳がわからなくなってきた。
…うん。でもまあ、今海外で同性同士で結婚出来るって言うのもあるしね!はははは、はは、は…。
『…お前がりつか!随分、大きいなったなあ』
30代だけど、昔は美形だったと分からせるような面影を持った男の人は、嬉しそうにりつさんの肩を叩いた。
『親父、そいつと知りあい?』
──あの、夢に出てくる声が聞こえた方を向く。
やはり太陽の逆光なのか、顔は見えなかった。
『ああ、りつ。こいつは俺の息子の梨吉だ』
やっぱりこの声の正体は梨吉さんだったのか。