不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。


…なんだここ。

俺は旧アパートを目の前にして目を見開いた。

木造のアパートは担任が言ったとおり今にも崩れ落ちそうだった。

本当に大丈夫なのか?と思いつつも中に足を踏み入れる。

階段をのぼるたびにぎしぎしと音がなって神経を使う。

「心。」

呆然として2階の部屋の前に立っている心に声をかけると、彼女はばっと振り向いた。


「…り、理来!?なんでここに!?」

「いや…俺も、ここに住む事になって。」

「え!?まさか理来も先生のミスで!?」

驚いたように目を見開き、俺の両肩を掴む心。本当は違うけど、俺は頷いた。

すると彼女は泣きそうな表情をする。

「こ、心?」

「よかった…理来と一緒で…わたし、村上君以外のクラスの皆から避けられてるし、高校生活、どうしようかと思っ、た。」

言い終わるなり心はぽろりと涙を零す。

俺は何故か胸が苦しくなった。彼女を引き寄せて、強く抱きしめる。

「り、理来!?」

「…俺がいるから。」

「え!?」

「俺が心の傍にいるから、大丈夫。」

安心させるように彼女の背中を優しく叩く。腕の中で心は頷いた。















で、どうしよう。何時離れればいいんだろう。抱きしめたまではいいものの、離れるタイミングを完全に失ってしまった。

良く考えたら俺、すごい大胆な事したような気がする。どうしよう。今更顔に熱が集中してきた。

「理来、そろそろ、」

離して、と心が言いかけた時だった。がちゃり、とドアが開く音が聞こえた。

音のしたほうをむくと、そこには無表情の乃木東矢がいる。

(は!?なんで乃木東矢が…)

焦っていると乃木は再び扉を閉めた。見られて恥ずかしいのか心は顔を真っ赤にして乃木がいる部屋を見つめている。
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