不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
俺はただ、少し危機感というものを持って欲しかっただけだった。
心はぽかんとして俺を見ていたが、次第に顔が林檎のように赤くなっていく。
「っ、…た、」
「?」
「変態っ!」
涙目で怒鳴る心を見て、驚いて力を緩めてしまった。
その隙に俺を突き飛ばし、「理来なんて嫌い」だの「さいてい」だの暴言を吐く心にイラっとしてしまった。
誰もお前みたいなやつ本気で襲おうとしてねーし興味ないし!ただもうちょっと
俺を男として見てほしかっただけだ。
いつまでも女みたいな扱いされてちゃ困る。
「お前みたいな奴を本気で襲うわけないって。」
鼻で笑えば、心はキッと睨んできた。潤んだ瞳からは涙がぽろりとこぼれる。
まさか泣くとは思ってなかった俺は焦った。
「な、なにも泣く事ないだろ!」
「っ、出てって。」
「…言われなくてもそうするよ。」
これ以上ここにいても状況は悪化するだけのような気がして、俺は部屋から出ようと扉を開けた。
最後に振り返り「じゃあな」と声をかけようとして固まる。
…え、あれ、まさか。
心の背後に、白い服を着た髪の長い女性がゆらりと立っている。鳥肌が立った。
「…こ、こころ…」
「何よ。」
「後ろ…」
「え?」
心は訝しげな表情で後ろを向いた。ぱちり、と幽霊と目があう。
「きゃぁああああ!」
二度目の悲鳴が旧寮に響き渡った。