不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
言葉を濁せば、「相談ならいつでものるからね!」と言ってくれた村上君に心の底から感謝した。
それからしばらくして予鈴が鳴るギリギリに乃木君が教室に入って来た。
がたん、と私の前の席に座るなり机に突っ伏して寝る体勢に入る彼を横目で見ながら自分の席に戻っていく村上君に手を振る。
予鈴がなり、先生が入ってきた。SHを終え一時間目の授業の準備をしているときに、ふと思った。
…そういえば乃木君はあの寮に前から住んでいるみたいだった。
ならあの幽霊について何か知ってるかもしれない。
乃木君に話し掛けるのは少し怖いけど聞くだけ聞いてみよう。
どうせ私は避けられているし、この際まわりにどう思われようが関係ない。
「ねえ、乃木君。」
意を決して声をかければ目の前の彼は怠そうに振り返った。
「…」
無言で私を睨みつける姿は怖い。
「あの、旧アパートの事なんだけど、」
問い掛けた瞬間、乃木君は目を見開き私の口を手でふさいだ。
「もごっ」
そのまま立ち上がった彼は強引に私の腕を引いて歩きだす。
クラス中が驚いた顔で私達を見ていた。
(ていうか、もうすぐ一時間目始まるのに!)