不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
飛び続けて29回目の時だった。最後の一回を飛ぼうと尾花さんの背中に手をおき、勢いをつけた時、「もう終わりだよね?」と言いながら身を起こしたのだ。
「っ、きゃ!」
飛ぼうとしていた私は体勢を崩し尾花さんを巻き込んで倒れこんでしまう。
「っうわ!!」
びったーん、と痛々しい音が響いた。
「痛ぁ…」
「ご、ごめんね尾花さん、大丈…」
大丈夫?と声をかけようとして私は手のしたにある感触に疑問を感じた。
倒れたひょうしに私が尾花さんの上に乗るような体勢になってしまったらしい。
私の片手は尾花さんの股の間に置かれていて、その下に女子にはあるはずのない感触がある。
「…え。」
気のせいだと思った私は無意識にそれの感触を確かめるように力をこめた。
「ぁ、」
小さな声が尾花さんからもれて、びっくりして彼女から慌てて離れる。
「…。」
尾花さんは顔を赤くしてキッとこっちを睨んで来る。
「…もしかしてバレちゃった?」
彼女の顔は怒っているのに声音は優しい。
私が一歩後ずさった時、尾花さんは立ち上がり私の腕を強く掴んで耳元で酷く恐ろしい低い声でささやいた。
「俺が男だってこと言ったら殺すぞ。死にたくなかったら黙ってろ。」
私の顔色は一瞬で悪くなった。今の言葉が信じられない。驚愕した表情で私から離れた尾花さんを見ると、彼女はいつもの笑顔で私を見ていた。