不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
もう少し強めにノックをすると、バキと音が鳴り最初よりもさらに大きな穴があいた。
「理来…」
心は呆れたように俺の名前を呼ぶ。
そのとき、がちゃりと扉が開き不機嫌そうな乃木がでてきた。
「…」
無言で睨みつけてくる乃木に、泊めて下さいとは言いづらい。
「なんやねん自分ら。」
鬱陶しそうに眉をひそめる。
「…幽霊がでたんだよ。このアパートやばいって。」
「だから?怖いんなら出ていけばいいんとちゃう?」
「できるならとっくにでてってるっつーの!てか昨日から思ってたけどお前って関西「それ以上言ったら殺す。」
話がそれているような気がする。心は「今日は我慢して明日先生に事情を話そう」と言っているが無理だ。首を吸われた時点で無理、怖い、断固拒否。
「乃木、今日だけ泊めてくれない?」
「…」
無言で扉をしめようとする彼の腕をつかみ、再度お願いをすると無表情で「無理」と言い放たれた。
しかし、俺は折れなかった。ここはあの手を使うしかないと思い、少し瞳を潤ませ、頬を赤くそめて上目遣いで乃木を見つめる。
「…お願い。」
「ほんまきっしょいな自分。」
…効かなかった。諦めるしかないかな、と思った時、隣にいた心が乃木の服を掴んだ。
「乃木君、私はいいから理来だけでも泊めてあげてくれないかな!?」
「…」
「理来は寝相悪いし、たまにベッドから落ちるけど普段は優しいし可愛いし、気を使ってくれて、すごくいい子で、」
きゅ、急に何言ってんだよこいつ。
俺は慌てて心の口を押さえ、真っ赤になっていく頬を見られたくなくて視線を逸らした。