不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
___心サイド
「…川村は、どうする気なんや。」
乃木君ははじめて名字で呼んでくれた。そのことに驚きつつも、私は口を開く。
「私はあの部屋で寝るから、大丈夫だよ。」
「お前寝れてないんだろ?」
「二日くらいどうにかなるよ。」
とは言ったものの、正直辛い。私は作り笑いを浮かべる。
そんな私を見て乃木君はポン、と私の頭に手を置いた。
「?」
「霊を追い払えばいいんやろ。」
「え!?で、できるの!?」
「…さあな」
乃木君は、霊がでた場所へ案内しろと言った。理来は何故か機嫌が悪い。
不思議に思いながらも乃木君を私の部屋に案内した。中に入り辺りを見回してみたが霊はいない。
「ほんまにでたん?」
「うん。ね、理来。」
理来に同意を求めると、彼はそっぽを向いて小さく頷いた。
「…」
そんな理来に、乃木君は呆れたような視線を向けた時だった。キー、と耳鳴りが響く。私は思わず隣にいた理来の腕に抱き着いた。
乃木君の表情が強張る。
ゆらり、と髪の長い女の人の霊が現れたとき、悲鳴をあげそうになった。なんとか堪えて、理来に抱き着く力を強める。
「今すぐでていけ。」
乃木君は霊にむかって、はっきりとそう言った。なんだが少しだけ部屋の温度が下がったような気がする。
「邪魔なんや。さっさと消え…」
乃木君は突然言葉に詰まり、その場にしゃがみこんだ。
「乃木!?」
理来が乃木君の名前を叫ぶ。女性の霊はゆっくりと近づいてきた。そして理来の前に立つ。
「っ、何だよ」
理来は少し怯えながらも強気な発言をした。刹那、霊は私をじっと見つめてきた。そして、消える。
霊が消えたことにほっとしたのもつかの間、私の体が勝手に動き出した。
(え、なんで!?)
パニック状態である。体の自由はきかないし声もだせない。
「心?」
理来は私を見て 大丈夫か? と問い掛けた。私は必死に体の自由がきかない事を伝えようとするものの、できない。
私の手が勝手に理来の頬に添えられる。
そして、顔が徐々に近づいていく。
…え、まって!嘘でしょ!?
そのまま、私は理来の唇にキスをしてしまった。