不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
「久しぶりだね、佐倉君。」
「お前また嫌がらせしに来たのか?」
「どうだろうね。」
「ハァ…いい加減にしろよ。会うたびに嫌がらせしてくるけど俺お前に何もしてないよな?あと心の手離せよ。」
「した。離さない。」
ぷい、とそっぽを向き私の手を更に強く握ってくる尾花さんに「痛い痛いはなして!」と訴えたが無意味だった。
村上君に視線で助けを求めたが彼は完全に尾花さん(♂)に魅入っていて気づいてくれない。
「心ちゃん。」
尾花さんは突然私の名前を呼んだ。
「な、なに?」
返事のかわりに彼はにっこりと笑うと、私の腕を強くひきそのまま抱きしめた。
びっくりする間もなく、べり、と剥がされて誰かに強く抱きしめられる。
「お前ふざけんなよ!」
理来の匂いがして、彼に抱きしめられてるんだと自覚したとき、私はほっとした。やっぱり理来は落ち着く。
「ふざけてないけど。…何でそんなに怒ってるの?」
「心が好きだからに決まって………。」
言いかけて、理来は「あ。」と声をもらす。まわりにいる生徒は私たちのやり取りに大注目していた。
それに気づいた私は恥ずかしくなりバッと理来から離れる。
「いや、お、幼なじみとしてってことで、」
みるみるうちに理来の顔は真っ赤になっていく。まわりの生徒達の視線が子を見守る親ような暖かいものに変わっている事に気づかないまま必死に言い訳する姿が可笑しくて私は笑った。
「そんなのわかってるよ!」
「…。」
私の言葉を聞いた村上君からため息が漏れた。尾花さんは相変わらずにやにや笑っているし意味がわからない。