不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
「ここです。」
そう言って私は振り向いた。「もうついたのかい。」おばあちゃんはすこし残念そうに言う。おばあちゃんの隣にいた理来は何故だか顔を青くして潤んだ瞳をしていた。よほど辛い目にあったのだろう。
村上君はそんな理来を見て、「理来、お疲れさん。」と告げた。
「理来、大丈夫?」
「...大丈夫に見えるかよ。」
「...。」
正直、見えない。私を見て理来は溜息をはくと「さっさと除霊しろよ。」とおばあちゃんに言った。「わかってるわい。」おばあちゃんは今にも崩れそうな寮に足を踏みいれた。何号室か告げていないのに、おばあちゃんはまっすぐと私の部屋に向かう。
「ここじゃな。」
「わかるんですか!?」
「うむ。」
おばあちゃんは私の部屋を開けて、中へ入る。懐から数珠を取り出し、何かを唱えだした。途端に、室内の温度が下がる。
「...想像以上に、強い怨念を持った霊がおる。」
「成仏できるのか?」
「まあ、見ておれ。」
暫く念仏を唱え続けていると、ゆらりと何かが姿を現した。髪の長い女の霊。私達は顔を引きつらせる。村上君は私と理来の腕をがし、っと掴み「出たあああ!」と叫んだ。
「お主、何故ここにとどまっているのじゃ。」
__この部屋、私の恋人の部屋だったの。だから私、ここに居たいの。
「その恋人は生きておるのか?」
__いいえ、18年前に亡くなったわ。けど、待つの。
「成仏する気は?」
__ないわ。驚かせてごめんなさいね。でも、恋人の部屋に女が住んでいるって思うと嫉妬しちゃって。少し悪戯しすぎちゃったわね。
おばあちゃんと霊が何かを話しているけど、内容は聞き取れなかった。
「ばあちゃん、この霊なんて言ってるんだよ。」
「成仏する気はないそうじゃ。」
「ええええ!?」
「安心せい。悪さはもうしないと言っておる。」