現の境界線【短編】
なんで……どうして……

思考が空転して現状を理解出来ずにいた。

いや脳が理解する事を拒否していた。

警察に連絡しなくては……何を盗られたのだろう……ああ、床が濡れているのは外で雨が降っていてそれがふりこんでいるのだな……シャワー浴びてる間物音に全く気付かなかった……気付いて見に来て鉢合わせたらどうなっていたかな……

ひとつも答えが見いだせないまま疑問だけが浮かんでは消えてゆく。

蛍光灯が虚しく明るく照す部屋の中で、何も見ず何も聞こえず私はただ呆然と立ち尽くしていた。

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