Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
と、呼び鈴が鳴った。
飛び起きた仙太郎は、「お父さんとお母さんかな!」瞳に光を宿してソファーから飛び降りる。
バタバタと廊下を駆ける仙太郎に、おれと頼子は血相を変えた。
そんなわけない。
だっておれと頼子は此処にいるのだからっ、あああぁあ、あの調子だと誰彼確認せずドアを開けそうだ!
にゃあ、にゃあ、にゃあ!
鳴きながら仙太郎の後を追い駆けると、「あ。忘れていた」息子は立ち止まっておれ達を見下ろす。
んでもっておもむろに、自室の扉を開けるとおれと頼子をそこに押し込んだ。
しきりに鳴くおれと頼子に、人差し指を立てて静かにするよう促す。
「お父さんとお母さんかもしれない。見つかったら外に出されちゃうから、静かにしておくんだよ」
いやだから、おれ達がお父さんとお母さんなんだって。
訴えは息子の耳に届くはずもなく、無情にも扉が閉められた。
『貴方、どうする?』
こんな時間に訪問者なんて、このご時勢では警戒心を抱かなければならないことだ。
頼子の主張に頷き、
『心配に越したことはないな』
おれは高い扉を見上げた。
幸いな事にドアノブは従来の回して開けるタイプではなく、ドアノブを下げて開けるタイプだ。
だったらあのドアノブを下げ、扉を押せばいい。
『頼子。ジャンプできるか? あそこまで』
『ドアノブまで?』
『おれが扉を押すから、お前はそこまでジャンプしてドアノブを下げてくれ』