Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―


と、呼び鈴が鳴った。


飛び起きた仙太郎は、「お父さんとお母さんかな!」瞳に光を宿してソファーから飛び降りる。
バタバタと廊下を駆ける仙太郎に、おれと頼子は血相を変えた。

そんなわけない。
だっておれと頼子は此処にいるのだからっ、あああぁあ、あの調子だと誰彼確認せずドアを開けそうだ!


にゃあ、にゃあ、にゃあ!


鳴きながら仙太郎の後を追い駆けると、「あ。忘れていた」息子は立ち止まっておれ達を見下ろす。

んでもっておもむろに、自室の扉を開けるとおれと頼子をそこに押し込んだ。

しきりに鳴くおれと頼子に、人差し指を立てて静かにするよう促す。


「お父さんとお母さんかもしれない。見つかったら外に出されちゃうから、静かにしておくんだよ」


いやだから、おれ達がお父さんとお母さんなんだって。

訴えは息子の耳に届くはずもなく、無情にも扉が閉められた。


『貴方、どうする?』


こんな時間に訪問者なんて、このご時勢では警戒心を抱かなければならないことだ。

頼子の主張に頷き、

『心配に越したことはないな』

おれは高い扉を見上げた。


幸いな事にドアノブは従来の回して開けるタイプではなく、ドアノブを下げて開けるタイプだ。

だったらあのドアノブを下げ、扉を押せばいい。


『頼子。ジャンプできるか? あそこまで』

『ドアノブまで?』

『おれが扉を押すから、お前はそこまでジャンプしてドアノブを下げてくれ』

< 22 / 59 >

この作品をシェア

pagetop