Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
クンと鼻をひくつかせている頼子は、ピンッと耳を立てて分かったと承諾。
こうしておれ達は連係プレイで扉を開けることになったのだが。
尾を左右に振ってジャンプする頼子がドアノブにしがみ付き、おれが重い扉を押す…、その最中に頼子がおれの上に落ちてきて一回目は敢え無く失敗。
べたんと折り重なってその場に崩れてしまった。
『お前。重いな』太ったんじゃないか、率直な感想を述べると、『失礼ね』尾で顔を叩かれてしまう。
いやそうは言っても重い、おもいぞ。
ねこの体重だとはいえそれなりの重量を感じるのだから、きっと生身の人間に戻ったらそれなりに…、これ以上言うと頼子の機嫌を損ねてしまいそうだ。
やめておこう。
二度目、三度目の失敗を乗り越えて(その度に頼子にプレスされたおれって…)、おれ達はようやく扉を開けることに成功。
廊下に出たおれ達は急いで玄関に向かう。
そこには既に玄関の扉を開けた仙太郎の姿があった。
驚いたような顔で扉の向こうを見つめている仙太郎は視線を落としていた。
急いで足元に擦り寄ると、「あれ?」お部屋にいたんじゃないの? と困惑の色に染まった仙太郎の声。
おれ達を見下ろしてくる仙太郎は、然程おれ達の登場には驚いていないようだ。
寧ろ、驚いているのは訪問者のよう。