Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
「お父さんとお母さんじゃなかったんだけどさ…。ねえ、サンタクロースって小人さんだったのかな?」
そう質問されてしまい、おれ達はなんのこっちゃと仙太郎の見ている物に目を向けた。
ピシッと固まるおれと頼子の毛が逆立ってしまうのはこの直後。
視線の向こうに何かがいる。
何、と聞かれたら、息子の口ずさんでいる小さなサンタクロースだとしか言いようがない。
白雪姫にでも出てきそうな小さな老人がその向こうに立っていた。
身形はまんまサンタクロースの格好、黒い長靴に真っ赤な帽子、トレードマークの真っ白で重そうな袋を持っている。
しゃがんで小人を見下ろす仙太郎に、近付かない方がいいとおれと頼子が服を引っ張って引き離そうとするけれど息子は微動だにしない。
興味津々に小人を見つめて、「君はだれ?」と声を掛けていた。
小人(?)は答える。
自分はクリスマスの精霊だと。
嘘くさいったらありゃしない。
そんなお伽噺があるものか…、あー…、おれ達はねこになっている身の上だけどな。