Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
「さあ、マフラーを巻いて。上着を着て。手袋をはめて。クリスマスの忘れ物を探しに行こう」
とんだことを言い出すクリスマスの精霊(仮)に、純粋な仙太郎は「忘れ物?」こてんと首を傾げた。
コホンと咳きを零しながら、忘れ物なんてあったっけ? と疑問符を浮かべている。
「いいからいいから」
まるで悪徳商法のように支度をして来いと促す小人は、仙太郎に向かって時間がないと急かした。
だけど家を勝手に出たらお父さんとお母さんが怒るかもしれないし、電話だってあるかもしれないし、顔を渋る仙太郎の判断は正しい。
得体の知れない小人と共に夜道を歩くなんてとんでもないことだ!
しかし悪徳商人はめげない。
「行かないといかないと」
きっと君は後悔する、お父さんやお母さんも後悔する、と、あろうことかおれ達をダシにしてきた。
過剰反応する仙太郎に、
「これはお父さんやお母さんのため」
さあ探しに行こう、行こうよ、と服を引いてくる。
シャアっとおれと頼子は毛を逆立てて相手を威嚇した。
もろともしない悪徳商人は行こうと仙太郎に選択肢を与えず、グイグイと服を引っ張る。
困り果てたような顔を作る仙太郎に、
「どうせお父さんやお母さんは帰りが遅いよ」
二人が帰って来る前に戻ってくれば問題ないとトドメを刺しやがった。
この言葉に仙太郎も背中を押されたのか、分かったと頷き、少しばかり待っていて欲しいと自室へ駆け込む。