Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
若かりしおれ達が一軒のイタリアンレストランに入っていくところまで見送る。
最後まで見届けてしまうと、仙太郎はあることに気付いた。
「あれ小人さんがいない?」
何処へ行ってしまったのだろう、さっきまでいた筈なのに。
キョロキョロと周囲を見渡す仙太郎に倣っておれ達も小人を探す。
忘れ物を探しに行こうというふざけた理由で息子を外に引っ張り連れ出した悪徳商売人だというのに、そのご本人様がいなくなるなんて一体全体どうなっているのだろう?
不思議に思っていると、仙太郎が声音を上げた。
何が起きたのかといえば、仙太郎とおれ達の前にさっきの小人が現れたからだ。
小人?
いや成長した小人と言っておこうか。
仙太郎と同じ背丈のご老人が「次は今に行こう」と、手を取って歩き出す。
意味深に“今”を告げてくる老人と仙太郎の後を追うと、まるで走っている車窓から景色を眺めたように、景色が後ろへと流れていく。
不思議現象におれと頼子、そして仙太郎が目を白黒させている中、老人は歩みを止めた。
おれ達の目に映ったのは、ひとつの教会。
更けていた筈の空がまっさらに晴れている。
そこで結婚式を挙げている一組のカップル、幸せ一杯の祝福を浴びているあのカップルはやっぱりおれ達だった。