Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
* * *
―――…小さな揺れと共におれは目を開けた。
ハッと瞼を持ち上げれば、部下の姿。
「うたた寝ですか?」
疲れているんじゃないですか、とおれの顔を覗き込んでくる。
それになんだか顔色が優れないみたいですけれど、と声を掛けてくる部下の気遣いによっておれの思考は現実に返る。
部屋を見渡せば見慣れた職場。
自分の手の平に目を落とせば、人間の手が顔を出している。ねこの手じゃない。
嗚呼、おれは夢を見ていたようだ。
夢、ゆめ、…ゆめ。
あんな生々しい事故の現場が夢?
まさかそんな、だってあんなに仙太郎が…っ仙太郎?!
おれは携帯で時間を確認する。
携帯の液晶画面には『12/24』と『19:34』の表記が肩を並べていた。
12/24の19:34。
確か夢の中では仙太郎がテレビを観て…、おれ達の帰りを…っ、まさか今の夢は。