樹海の瞳【短編ホラー】
 私は、訪ねて来る者達の生業を、推し測ることが出来るようになった。
 この廃棄された屋敷にいて、同じ魂の臭いを感じとるだけではなく、触れ合うのだ。

 例えが悪いが、癒しに似たような感覚かも知れない。
 私はこの先、反省と自戒の念を胸に刻み、死者の集う樹海に訪れる者達への、道標となろう。

 私は、罪深い男だ。
 しかし、尚更、生きなければならない。

 私が拾ってきた魂は、間違いなく私に宿っているのだから。
 この樹海の自然と共に、与えられた恵みを糧にし、見守って行かなければならないから。


 樹海の一軒家には、男が独りで住んでいる。

 貴方がそこにたどり着いたのなら、もう、魂は慈しまれ、拾われているのであろう。
 亡骸は自然に帰り、貴方はただ、安らぎの場所を求めれば良いのである。


-了-



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