樹海の瞳【短編ホラー】
第二章 訪問者
「良かった。私たち道に迷ってしまって。ここはどの辺りなんでしょうか」

 若い男が安堵の表情を作って、黛を見上げた。

「樹海の真ん中ですよ」

「外に出ようとして、奥に入り込んだ訳か」

 年配の男が口を挟む。

「そうなりますね」

「外と連絡がとれますか」

「あいにく電話とか無くて」

「そうなんですか。すみません。何か飲み物とか頂けませんか」

「お茶で良ければ」

「ありがとうございます」
 黛は二人を居間に通した。
 お茶を飲むと、二人は落ち着いた口調に変わった。

「この樹海、自殺の名所ですから、迷った時はどうしようかと」
 若い方が続けて話す。

「遊歩道から逸れなければ大丈夫な筈ですが」
 黛は、茶を口の中で食べるように飲んでいる年配の男の方を向いた。

「ワシはハラが痛くなってな。隠れて用を足そうとして奥まで入り込んでしまった」

「そのうち霧が出て戻れなくなったのですか」

「そうだ。それで誰かいないか呼んでいると、この若いのに出会った訳だ」

「ええ、そうなんです」

「では、お二人はお知り合いではないのですね」

「そうや」

「私は珍しい鳥を見掛けまして、カメラに収めようと中に入ったんです」

「そうでしたか」

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