樹海の瞳【短編ホラー】
第三章 濃霧
 昨夜、疲れていた二人は、体が温まると、リビングで早々に眠った。
 二人は、毛布にくるまって知らず知らずのうちに、同じ境遇のせいか、肩を寄せ合っていた。

「おはようございます」
 先に起きていたのは、木暮の方だった。右手で頭の頂を掻きむしりながら、窓辺で佇んでいた黛の近くへやって来た。

「おはようございます。木暮さん」
 黛は仮眠をとった程度であった。もの書きは、書けるときに書いておかなければ、後になって後悔する。

「濃い霧ですね」

「ええ、この霧が晴れませんと、外に出るのは危険ですよ」

「確に。前が見えなくて歩けそうもないですね」

「珈琲、いかがですか。たいしたものはありませんが、パンとチーズぐらいならありますよ」

「はい、いただきます」

 木暮は出されたものを、美味しそうに食べた。
 記憶のどこかに潜んでいた、爽やかな朝のひとときと、何ら変わらなかったのだろう。

「鳥を撮っていたそうですね。何か撮れましたか」

「それがロクに撮っていないうちに迷ってしまいまして」

「それは残念でしたね」

「そうなんですよ」

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