樹海の瞳【短編ホラー】
そんなとき、西郷の大きなあくびが聞こえた。
目を醒ましたようである。
体を重そうに持ち上げ、黛と木暮の方を向いた。
「やあ、おはようさん」
西郷が起きてきたので、黛は昨日気きそびれた携帯電話の事を聞いた。
「ところで、お二人は携帯電話はお持ちではないのですか」
黛の言葉に、二人は顔を見合わせた。
「ワシは、そんなもん、持たん主義だ」西郷は何やら自慢する風に胸を張って答えた。
「私は森を散策中に、壊してしまったのです」
木暮は液晶画面が割れた携帯電話を、ズボンのポケットから差し出した。
「そうですか。連絡が取れなかったのですね」
「ああ、そうだ」
西郷が答えた。
「うまそうだな。ワシも食べていいよな」
「珈琲を入れますよ」
「このパンとチーズ、美味しいですよ。黛さんが入れてくれた珈琲も」
木暮は幸せそうな表情をしていた。
西郷も、その様子を見て、勢いよく食べ始めた。
濃い霧が、樹海を充満している。
外界から閉鎖された空間に、テーブルを囲んだ三人による、団欒のようなものが、確かにそこにあった。
目を醒ましたようである。
体を重そうに持ち上げ、黛と木暮の方を向いた。
「やあ、おはようさん」
西郷が起きてきたので、黛は昨日気きそびれた携帯電話の事を聞いた。
「ところで、お二人は携帯電話はお持ちではないのですか」
黛の言葉に、二人は顔を見合わせた。
「ワシは、そんなもん、持たん主義だ」西郷は何やら自慢する風に胸を張って答えた。
「私は森を散策中に、壊してしまったのです」
木暮は液晶画面が割れた携帯電話を、ズボンのポケットから差し出した。
「そうですか。連絡が取れなかったのですね」
「ああ、そうだ」
西郷が答えた。
「うまそうだな。ワシも食べていいよな」
「珈琲を入れますよ」
「このパンとチーズ、美味しいですよ。黛さんが入れてくれた珈琲も」
木暮は幸せそうな表情をしていた。
西郷も、その様子を見て、勢いよく食べ始めた。
濃い霧が、樹海を充満している。
外界から閉鎖された空間に、テーブルを囲んだ三人による、団欒のようなものが、確かにそこにあった。