春、恋。夢桜。
俺は、麗華の目線に合う高さに鏡を合わせた。

体勢を変えた麗華が、まじまじと鏡を覗き込む。


「おぉーっ!響!何じゃ?これは。ふわふわじゃぁ!」


麗華は、両手で髪を触りながら嬉しそうにはしゃいだ。


『ふわふわじゃ』


その麗華独特の言葉遣いが

言葉や表情の自然さを強調してるみたいでくすぐったい。


そんな麗華の顔を見たら、俺も自然に笑顔になった。



少し前までピンク一色だったこの桜にも、少しずつ緑が混ざり始めた。


美しく散った花びらの分だけ、枝からの視界も広くなる。


いろいろな角度から髪を眺めては、俺に微笑む麗華の横顔を

綺麗な望月の輝きがまっすぐに照らす。


こんな時間がずっと続けばいいのに……―――


それは、こんな風に思わせてくれる程、俺にとって大切な時間になった。
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