春、恋。夢桜。
「響!おはよう」
「おはよう」
教室へ行くと、戸崎がうるさいくらいに大きな声で言ってきた。
4月の半ばになったとは言っても
まだ始まったばかりの学校では席替えなんてあるはずもない。
だから俺は、相変わらず戸崎のトークショーを聞く破目になっていた。
「やだよなぁ、今日。体育も移動教室もないから、1日中ここに座ってなきゃいけないんだよなー。
寝るっつーの!」
俺に話しかけてるような、いないような戸崎の言葉を
適当に相槌を打って受け流す。
朝から何故かハイテンションなこいつにも、少し慣れてきたってことか……。
窓の外を眺めると、相変わらず月美丘がよく見える。
おそらく今も、順調に花びらが散ってるんだろう。
そうは言っても、さすがにここからでは、遠すぎて花びらまで見えない。
ただ、日に日にピンク色だった部分が減っていくのはわかる。