春、恋。夢桜。
もう、桜の時期も終わるのか……――――
俺は麗華に、桜を美しく咲かせることが仕事だと聞いたことを思い出した。
それからも、至って普通に時間が過ぎた。
ぼうっとして、朝から隣で気持ちよさそうに寝る戸崎を横目で見て、……
そのうちに、大した連絡もないままに朝のホームルームまで終わった。
担任の特権だとでも言うように
少しの間も開けないまま、担任の授業が始まる。
担任の担当科目は現代文。
本気で眠たくなりそうなスピードと声で評論文を音読している担任に
誰もが嫌気が差してるようにも見える。
「窓側の奴。眩しいからカーテンを閉めてもらってもいいか?光が反射して、黒板も見づらいだろうし」
授業がだいぶ進んだ後。
段落の区切りの良いところで音読をやめた担任が、そんな指示を出した。
窓側のクラスメート達が、座ったまま次々とカーテンを閉め始める。
面倒だとは思いつつも、俺もその言葉に従った。
「ありがとう」
そう言った担任は、また何事もなかったかのように授業を再開した。