春、恋。夢桜。
五、潤
【一】
「うわぁああ!潤ちゃん、すごーい!これね、なかなかできないんだよ!」
「まぁな!この手のやつは俺に任せとけ!」
「うん!でも、響兄の方が教えるの上手……」
「いや、梨恋ちゃん……それはひどくない?」
リビングのドアを開けると、何とも謎だらけな会話が繰り広げられていた。
声と自転車からして、俺に背を向けるのは戸崎。
そして、戸崎に向かい合う形で座るのは梨恋だ。
「あ、響兄!お帰りなさいっ!」
戸崎の後ろに俺を見つけた梨恋が、嬉しそうに笑った。
「おぉ、響!お前、いきなり教室を飛び出すから……。
ほら、鞄。忘れてたから届けてやったぞ!」