春、恋。夢桜。
「そのピンクのトートバッグだよ!そんな可愛いの、響兄のなわけないでしょ?」
「あぁ、麗華の……」
俺は、ペットボトルを机の上で転がしながら答えた。
「なんだぁ!そうだったんだ!響兄と麗華ちゃんって本当に仲良しだよねー。麗華ちゃん、元気だった?」
元気……、だったんだろうか?
俺には、そんなことすらわからない。
「わからない。いなかったんだよ」
「えっ?」
「麗華は、いなくなってた」
互いに下を向いていて、梨恋が今、どんな表情をしているのかもわからない。
想像、したくもない。
「どういうこと?響兄。麗華ちゃんがいなくなるわけないでしょ?
だって……だって、桜……は?」
俺と梨恋は同じタイミングで顔を上げた。
梨恋の瞳は、不安で揺れてるように見える。
「いなくなってたんだよ。桜と一緒に……」