春、恋。夢桜。

「そのピンクのトートバッグだよ!そんな可愛いの、響兄のなわけないでしょ?」

「あぁ、麗華の……」


俺は、ペットボトルを机の上で転がしながら答えた。


「なんだぁ!そうだったんだ!響兄と麗華ちゃんって本当に仲良しだよねー。麗華ちゃん、元気だった?」


元気……、だったんだろうか?


俺には、そんなことすらわからない。


「わからない。いなかったんだよ」

「えっ?」

「麗華は、いなくなってた」


互いに下を向いていて、梨恋が今、どんな表情をしているのかもわからない。

想像、したくもない。


「どういうこと?響兄。麗華ちゃんがいなくなるわけないでしょ?
だって……だって、桜……は?」


俺と梨恋は同じタイミングで顔を上げた。

梨恋の瞳は、不安で揺れてるように見える。


「いなくなってたんだよ。桜と一緒に……」



< 119 / 237 >

この作品をシェア

pagetop