春、恋。夢桜。
「そ、んな……。嘘、でしょ?嘘だよね?」

「残念だけど、嘘じゃない。麗華も、桜も、消えたんだ……」

「何で……?」


俺は、消えそうになる声を必死で保った。


視界に入るピンクが、どうしようもない現実を決定付けてるみたいで、悲しくなってくる。


「悪い、梨恋。俺は部屋に戻る……。戸崎も、好きな時に帰ってくれて構わないから」


そこまで言うと、俺はペットボトルをごみ箱へ投げ入れて、キッチンを出た。



他の人の気配がしない階段に、俺の足音だけが響く。


2階へ行くためだけの短い階段。

窓が少ないから、沈みかけの夕日の影響で薄暗い。



俺は、廊下の1番奥にある自分の部屋のドアを開けた。

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