春、恋。夢桜。
「あ、……あぁ」
俺は、戸崎に向けていた視線を天井に移した。
「何か白けた返事だなぁ……。
じゃあ、さっき梨恋ちゃんと話してた“麗華”って子も何か関係あるのか?」
「…………」
「あるんだな……。わかりやすっ!」
からかうような声でそう言った戸崎は、椅子の動きを止めて体を俺に向けた。
「仕方ねぇなぁ……。
よしっ!響には特別に、俺の初恋の話をしてやるよ!」
「……は?お前の初恋の話なんて、今望んでないんだけど……」
何言い出すんだよ、こいつ……――――
さっきまの淋しげな表情も、今は見えない。
「この話はまだ誰にも話したことないんだ。有り難ーく思って聞けよ!」