春、恋。夢桜。
「良かったな。それで?」


「……冷めた返事だな、相変わらず。あぁー、まぁ……、それでな?その子は背も小さくて、華奢で、守ってあげたい!って思うような子だったんだ。

でもな、俺の初恋は、絶対に天地が引っ繰り返っても叶わないって決まってたんだよ……」


「は?」


楽しそうに話していた戸崎の声が、低くなる。


もう、部屋の中には街灯の光しか入ってこなくなっていた。


あまりにも暗い室内。

これでは、こんなに近くにいる戸崎の表情でも、あまりよく見えない。


でも何となく……

戸崎の瞳は、妙にまっすぐ、俺に向かってる気がした。


「戸崎……。それ、どういうことなんだ?」

「響、お前なら理解してくれるかもな。俺の初恋の相手はさ……、驚いたことに妖精だったんだよ」
 


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