春、恋。夢桜。
当時を思い出すみたいに話す戸崎を、俺は黙って見ていた。


花の精と人間が関わる条件。

紅姫の存在。

全部、麗華から聞いた話と同じだ。


学校の話をしたことは、俺だってある。


昔の戸崎の姿に、俺はいつのまにか、自分を重ねた。


「スミレは、何の花の精だったんだ?やっぱ、すみれなわけ?」

「いや。パンジーだ」

「は?」

「黄色いパンジーだ」


あまりにも真面目そうに答えた戸崎が面白くて、俺は笑った。


「おいっ!響!お前、パンジーって聞いて少し馬鹿にしてるだろ!」

「してねぇよ!パンジーってスミレ科だし。黄色ってのが戸崎っぽい」


今にも殴りかかりそうな態勢だった戸崎が、落ち着きを取り戻した。

それでも、何故か笑いは止まらない。


「黄色が俺っぽいんじゃないと思う……」

「え?」

「俺が黄色っぽいんじゃねぇかな……?」


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