春、恋。夢桜。
戸崎は、何かを考え込むみたいに

呟くみたいに言った。


「もう小学生だったから、三つ子の魂百まで……ってわけじゃないけどさ。何か、それに似たような感覚があるんだよな。

あの頃の俺は少しでもスミレに近づきたくて、黄色になりたかったんだよ。


「黄色に?」

「そう。俺の中では黄色って、明るくて、楽しくて、何にでも一生懸命なイメージだったから……」

「それは、スミレがそういう子だったからか?」

「あぁ」


妙に素直なこの態度も、黄色のイメージなんだろうか。


そう考えると、戸崎が本当に純粋な奴なんだと思えるから不思議だ。


「初恋であると同時にさ、スミレの存在は俺の憧れだったんだよな。実は今でもそうなんだよ。

ふとした瞬間にスミレの姿が思い浮かんでさ、無意識のうちにいろいろ比べてるんだよな……。こんな時、スミレならこうするなぁ……ってさ」



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