春、恋。夢桜。
そう語る戸崎は、どこか楽しそうだった。


思い返してみれば、戸崎は本当に黄色だった気がする。



初めて教室に入った日に、隣の席だって理由だけでフレンドリーに話し掛けてきた戸崎。


体育の時に、少し沈んだ空気を漂わせていた俺に、躊躇う事無く絡んできた戸崎。


それに、こうして俺の家まで来てくれた戸崎。


1年前の出来事以来、俺は友達を作ろうとは思えなくて、壁を作ってた。

でも戸崎は、いつもそれを無理矢理に破って入り込んでくる。



それは全部“黄色”だったんだな……――――



「男ってさ、結構引きずるもんだよな?こーゆーの。いつまで経ってもスミレのこと考えてる瞬間があって。
でもさ、それが不思議と、嫌じゃねぇんだよ」

「何で?」


「まだまだ幼い頃の話だけど、スミレを好きだったことは、俺にとってプラスになってるんだと思う。

……まぁ、実際に一緒に過ごしてたのはほんの少しだけだったけどな」


「え……」
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