春、恋。夢桜。
「夢とか願いとかを叶えるには、それが夢だ、願いだってのを忘れるくらい猛烈に行動するしかない……なんて、大人っぽいことも言うし。
本当に、……変な奴だったよ」


本当に、格好良い奴だった……―――


「麗華ちゃんも、スミレに負けず劣らず、なかなか魅力的な女じゃねーか」


俺とは対照的に明るい声で戸崎が言った。


「でも、消えたら……、いなくなったら意味がねぇだろうが」


俺は、思わず両手を握り締めた。

でも、何故か震える手には力が入らない。


その両手は、とてつもなく弱々しく見えた。


「完全にはいなくなってねぇだろ、麗華ちゃんは」

「え?」


「確かに、桜はなくなった。麗華ちゃんの存在の有無は別にして、それは俺だって悲しい。

でもさ、思い出としては、いろんなものが残ってて、それが楽しさとか、辛さとかを覚えててくれるだろ?

ほら、そう考えたら、完全には消えてねぇよ」


戸崎は、どこか得意げ笑った。
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