春、恋。夢桜。
 
こんなにも努力家の麗華の傍で、俺は何をやってたんだろう。

何をやってるんだろう。


そんな風に自分を問い詰めてみても

結局俺は、明日から何か変われるわけじゃないと思う。



「こんなにも練習したって……」


いくら“もの”を残してくれたと言ったって……。


「……結局、お前はいなくなっちまったじゃねぇか」



俺はまた、大切なものをうしなっちまったじゃねぇか……―――



もう二度と、大切なものを失う虚しさを

苦しさを味わいたくない。


そう思っていたはずなのに俺は、今またこんな暗闇で、燻ることになってしまった。


それでもまた、未来を信じて頑張れだなんて

安っぽい台詞を素直に受け入れられる程、俺は純粋なんかじゃない。
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