春、恋。夢桜。
  

俺は、静かに麗華のノートを閉じた。


そのまま、腕を伸ばして机の上のライトを消す。


再び暗さを取り戻した部屋の中では

もう何もかもがうっすらとしか見えない。


俺は、感覚だけを当てにしてベッドを探した。


何事もなかったみたいに寝転ぶと、開けたままにしていたカーテンの間から、黒い空が見えた。



小さく光る星達を、いつもはとても眩しく感じてた。


でも、今はそんな眩しささえ懐かしい。



空に一際目立って輝く下弦の月が、俺の瞳に虚しく焼き付いた。
< 143 / 237 >

この作品をシェア

pagetop