春、恋。夢桜。
俺は、静かに麗華のノートを閉じた。
そのまま、腕を伸ばして机の上のライトを消す。
再び暗さを取り戻した部屋の中では
もう何もかもがうっすらとしか見えない。
俺は、感覚だけを当てにしてベッドを探した。
何事もなかったみたいに寝転ぶと、開けたままにしていたカーテンの間から、黒い空が見えた。
小さく光る星達を、いつもはとても眩しく感じてた。
でも、今はそんな眩しささえ懐かしい。
空に一際目立って輝く下弦の月が、俺の瞳に虚しく焼き付いた。