春、恋。夢桜。
目の前でふわふわと笑う彼女から
何故か目が離せなくなった。
「紅姫様……。本当に、久しぶりじゃのう」
「何故そんなにも、浮かない顔をしていらっしゃるのです?
確かに、あなたの桜は人工的な力によって生涯を終えました。でも、あなたはあなたの役目を立派に遣り遂げたではありませんか」
そう言いながら、紅姫様はゆっくりと屈んだ。
「今年、月美丘の桜は、本当に綺麗でしたよ?」
まるで子供をあやすみたいに、紅姫様はわしの肩に両手を乗せて言った。
「ありがとうございます。でもな、そうじゃないんじゃ……」
「はい?」