春、恋。夢桜。
「今までにここへ戻ってきた花の精たちは皆、半透明だったのです」

「半透明……?」


「はい。そして、あたくしと数分の間会話をした後、やはり、光の粒となって、少しずつ消えてゆきました。

でも麗華、あなたは半透明ではないでしょう?それに、あたくしともうとても長い間話していますが、消える気配が全くないではありませんか」


そう言われてみれば、確かにそうじゃ。


わしの体は、普段とどこも変わらない。


普通に感覚もしっかりとしておるし

たぶん触ろうと思えば、何かを持つことだってできる。


「じゃが……。どうして、わしだけなんじゃ……?」


わしは無意識に、そう呟いていた。


それは、本当に何気ない一言。

じゃが、紅姫様の耳にはしっかりと届いていたらしい。


紅姫様は少し唸った後、静かに話しだした。


「おそらく、あなたが他の花の精達と、違うからです」

「違う?」

「えぇ。あなたの出生は、少し皆と違うのです……」
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