春、恋。夢桜。

【二】

紅姫様は、特に表情を変えるわけでもなく

静かにそう言った。


「出生、とな?」

「えぇ。これは、今まで黙っていたのですが……。
あなたには、しっかりと話さなくてはいけないのかもしれませんね」


紅姫様は一息吐いた。

そして、ゆっくりと語りだした。


「花の精は、全ての花に1人ずつ。ですから、花の精同士がお互いに顔を合わせることもあるのですよ」

「どういう意味じゃ?」


わしは、自分以外の花の精にはあったことがないのじゃが……。


「例えば、1つの花壇だと、同じ時期に、同じ種類の花がいくつも生まれる場合がありますよね?その場合、その花壇にはまとめて1人の花の精がつきます」

「なるほどな」

「ですが、同じ時期に同じ花壇に生まれても、それらが違う種類の花だった場合は、違う精がつきます」
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