春、恋。夢桜。
4月も半ばに差し掛かろうとしていた時期で
桜はほぼ、満開の状態でした。
まだ、今にも開きそうな蕾も、たくさん残っていました。
それなのに、突然、花びらの隅の方が、変色し始めたのです。
赤黒くなるもの。
日に焼けた肌のような茶色に染まるもの。
ピンク色が薄くなってしまうもの。
どうしてそのような状態になったのか、全くわかりませんでした。
そしてついに、蕾までもが黒く変色し
命を絶ち始めたのです。
そんな状況になっても、あたくしは何をどうすれば良いのか、全く分かりませんでした……。
もちろんそれは、周りにいた花の精達も同じだったようです。
どんどん体調を悪くしていく桜とあたくしを
彼女達はただただ見て、慌てているだけでした。
そのままの状況が少し続いた頃、町の人々が月美丘にやってきたのです。