春、恋。夢桜。
いきなりのことに
あたくしの頭は上手く話についていってはくれませんでした。
『今日からそなたを紅姫と名付けます。私の代わりに、しっかりと役目を果たして下さいね』
その方がそう微笑んだ瞬間、あたくしの体は銀色の光に包まれました。
そして、あたくしは今の格好と髪型になったのです。
『あの……。月美丘の……あたくしが今までいた桜には、新たな精をつけて下さるのですか?
それとも、まさか……あのまま?』
背を向けてどこかへ行こうとするその方に
あたくしは必死で声を掛けました。
その方の体は、少し半透明になっていました。
きらきらとした光に包まれたその方を見た時に思ったのです。
きっとこのまま消えていくのだろう……と。
だからあたくしは、その方を呼び止めなければ、とそのことで頭がいっぱいでした。