春、恋。夢桜。
『それは、私に聞くことではありませんよ。そなたが考えて、お決めになれば良いのです。
もう、花の精をまとめるのは私ではありません。そなたです』
すっぱりと言い切ったその方に
あたくしは何の反応も返せないまま固まってしまった。
あたくしが、花の精のまとめ役。
あたくしが、月美丘の桜の運命を決める。
あたくしが、紅姫……。
次々と体の中を駆け巡る事実で、あたくしはパンクしそうでした。
でも、これだけは確かめなければいけない……――――
あたくしはとっさに、そう思ったのです。
『あの!1つだけ!1つだけ教えて下さいませんか?』
『何ですか?急いで下さいね。私の体は、もう長くはありませんから』
焦っているような、いないような口調で
その方は言いました。
そこであたくしは、急いで話を続けたのです。