春、恋。夢桜。
【四】
紅姫様は、そこまで言い切ると一息吐いた。
「麗華。もうすでに、話の流れから察しているとは思いますが……。
生贄として、桜の根本に埋められたのは、あなたなのです」
わしは、紅姫様をまっすぐに見つめた。
自分が昔、生贄として利用されたこと。
自分が昔、人間に裏切られていたこと。
自分が昔、紅姫様に救われていたこと。
自分が昔、人間であったこと……
全てのことが予想外で、全てのことが驚き以外の何物でもなかった。
「埋められていたあなたについて、まず、あたくしはいろいろな情報を集めました。そうしたら、とんでもないことがわかったのですが……。
それを知った時、あたくしはあなたを、絶対に桜の精にすると決めたのです」
「それは、どういうことなのじゃ?」
いったい、どんな言葉が続いていくんじゃろう。
優しく微笑む紅姫様に、わしは自然に、言葉の続きを求めていた。
「あなたの人柄が、あたくしの理想にぴったりだと思ったのです。あたくしが思う、月美丘の桜のイメージに……」
「何じゃと……?」