春、恋。夢桜。
「わしの、今後?」

「えぇ。だって、あなたの体は全く消える様子がないじゃありませんか!
きっと、他の花の精とは別の未来が待っているのではないか、と思うのです」

「別の、未来……か」


紅姫様と違って、わしは今までに他の花の精の最後を見たことはない。


じゃから、実際にどのような状態になるのが当たり前なのかはわからない。


それでも、紅姫様が他と違うと言うのならば

わしはやはり、他の花の精とは違うのじゃろう。


「少し、考える時間を下さいませんか?何か……、きっと、何か良い方法があると思うのです」


そこまで言うと、紅姫様は片手を顎に添えながら考え始めた。


その姿は、どこか可愛らしい。


花の精は、見た目が衰えることはない。

紅姫様も、人間で言うと20代半ばくらいに見える。


一生懸命にわしのことを考えてくれる紅姫様を眺めていたら、わしは本当に幸せな気分になった。


未来、人間、違う、消えない、花の精、……

もしかして、ですが、思いやり、戻す、優しさ、……


いろいろな言葉をつぶやきながら考え込んでいた紅姫様が
そっと顔をあげた。


「……思いつきました」
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