春、恋。夢桜。
突然、自分でもびっくりしたような顔で、紅姫様はそう言った。
目を見開いたようなその顔には、あどけなさも垣間見える。
「戻ってしまいますか?」
「は?」
紅姫様、全く意味がわからぬ……!
わしは、当たり前のように間抜けな声をあげた。
「ですからね、戻ってしまえば良いのではありませんか?」
「何にじゃ?」
「人間に、ですよ。もちろん!」
紅姫様は当たり前のようにさらっとそう言った。
その顔には、うっすらと笑顔が見える気がする。
「は……?」
「そうです!戻ってしまいましょうよ。月美丘の桜の精から、人間に、……ね」