春、恋。夢桜。
「響ー!!ご飯だから降りて来てーっ!片付けもあるから、のろのろしてないでよ!」


いつの間にか帰って来てたらしい母親の叫ぶ声が、容赦なく俺の部屋にまで響いてきた。


まだ、このままここでじっとしていたいという願望の方が強い。

食欲だって、あまりないのが事実だ。


でも、怒らせるのも面倒なんだよな……――――


そう思って、仕方がなく体を持ち上げる。


たった3日。

されど、3日。


すっかり重さを取り戻した体が、心まで重くしてるような気分になる。


気合を入れようと体を起こすと、自然に机が目に入った。


3日前から机に放置したままになっているノートやスケッチブックが

暗く狭い視界の中で妙に存在感を放ってるように見える。


その中でも、ピンクのトートバッグは桜の花びらを思い出させるみたいで……


特に眩しくて、痛かった。


触れたくないから、触れない。

やりたくないから、やらない。


そんな幼稚なことしか出来ていない自分に、腹が立たないわけじゃない。



でも、そんな気持ちとは裏腹に何も出来ない自分を

俺は毎日繰り返すだけだった。
< 183 / 237 >

この作品をシェア

pagetop