春、恋。夢桜。
ホームルームが始まるまでは、まだ少し時間がある。


この、朝のほんの少しの時間は、放課後とまではいかないけど

それなりに明るい声に包まれていた。


放課後よりも静かなのはたぶん

授業中にある小テストに向けて、最後の悪あがきをしている奴が多いから。


そうは言っても、さっきから、一緒に歩いてるのに一言もしゃべらない俺達は

この雰囲気の中ではかなり浮いていた。


それに、俺に至っては、学校へ来てから1度も口を開いてない。


潤だって、教室を出てからは何も話してない。


見てる方も気分悪いだろうな……


そう思いながら、俺は淡々と足を進めた。



屋上に全く行ったことがない俺は、それがどこにあるのかもわからない。


だから、おとなしく潤の後ろについて行くしかなかった。


潤の背中からは、何とも言えないオーラを感じる。


この背中の後に続くことには少し抵抗したくもなった。


怖くはないが、怖い。

それが、今の俺の正直な状態だった。



ずっとまっすぐに歩き続けて、廊下の1番突き当たりまで来た所で右に曲がった。


そこには今までに使ったことのない階段がある。
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